Athlete # 17
プロバスケットボールプレイヤー
三浦佑太
7年越しでプロテストに合格。遅咲きのプレイヤー
プロバスケットボールプレイヤーの三浦佑太は、努力型の選手だ。
プロチームに入団するべくトライアウトに挑戦するも6回落ち、7回目でやっと合格したという遅咲きのプレイヤーである。
「もともと努力や挑戦することが楽しいと思うタイプ」と笑いながら言うものの、7回も挑戦し続ける精神力は並々ならない。努力を重ね、越えてきたからこそ理解できることがあるように、「バスケットボールの上手くなるやり方」を知っていると三浦は言う。プロ選手として活動するかたわら、子ども達やプロを目指している人、社会人にバスケットボールの指導もしている。
「プロになるため」の課題解決と自己成長を意識して実力を養う
北海道出身の三浦は、小学校4年生からバスケットボールを始め、中学校3年生で「ジュニアオールスター」の北海道選抜に選ばれ、全国大会に出場するまでに成長。高校は、北海道でインターハイに出場するほどのバスケットボール強豪校に進学した。2年生でレギュラーになったが、その年はインターハイ出場を惜しくも逃し、3年生ではインターハイが決まったにも関わらず、怪我のため応援側となってチームを支えた。
小学校の卒業文集に将来の夢を「プロバスケットボール選手」と書くほど、バスケットボールに打ち込んでいた三浦は、実業団に入るためにバスケットボールの強い大学への進学を考えていた。三浦が高校生だった頃は、バスケットボール選手を職業にする場合、大学のバスケットボール部に入部し、インカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)で活躍し実業団に入る道しかなかったのである。選んだ先は、当時インカレで最強と言われていた日本大学文理学部。トップ選手を含め募集人数以上の応募者が続々集まってくるような状態で、残念なことに三浦はバスケットボール部には入部できなかった。この時点で、三浦の実業団への道が閉ざされてしまったのだ。
しかし幸運なことに、三浦が大学2年生の年に既存のリーグとは別に、プロリーグとして「日本プロバスケットボール(bj)リーグ」が発足、トライアウトで入団できる新たなチャンスが訪れた。「大学で練習ができないなら、別の場所でバスケを続けよう」と考えていた三浦は、プロ選手を何人も輩出するほど実力のある社会人チーム「横浜ギガスピリッツ」に籍を置き練習に励み、元実業団選手から直接指導してもらえるようにもなった。
「目標達成のためには、まず環境を変えることが必要と思ったので、高い志を持って活動しているチームに在籍させてもらいました。そして成功するには、自分の課題を解決し成長することが大切ですから、『何ができていないのか』『何が必要なのか』を冷静に捉え、練習を積み重ねていきました。とてもありがたいことに、指導者に恵まれたので、コツコツ自分のスキルを高めることができました」。2006年からトライアウトにチャレンジし始め、入団が決まったのは2013年、7年の月日を経てやっと「東京エクセレンス」とプロ契約を結ぶことができた。
「できない」を「できる」に変えてきた。だから「バスケットボールの上達方法」を伝えられる
念願叶ってプロ選手になったが、成績を残しチームに貢献しなくては、契約更新にもならない厳しい世界である、気を抜いてはいられない。
「1試合フルで出場できるわけではないので、出場した時が、自分のプレーを観てもらえる最大のチャンス。だから毎回、真剣勝負です。そして、試合はもちろんのこと、練習の時も気を抜くことはありません。常に向上、成長すること、そしてどんな時でも能力を発揮できることに焦点を当てて取り組んでいます」
2013〜2015年の3シーズンにおいて、東京エクセレンスは、2部リーグとして位置付けられていた「ナショナル・バスケットボール・デベロップメント(NBDL)リーグ」で三連覇を果たしている。その後、バスケットボール界の二つのリーグが統合されて、2016年に通称「B.LEAGUE(ビーリーグ)」と呼ばれる「ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」が発足し、NBDLリーグは廃止、東京エクセレンスはB2リーグに参戦する。
2018年現在は、B2リーグ参加条件の一つ「ホームである板橋区に3,000人程度収容できるホームコートの設置」が現実にならなかったため、降格してB3リーグに参戦している。プロチームであるからには利益を追求する必要があり、そのための器としてホームコートが必須という前提だ。野球、サッカーに次ぐ「第三のスポーツ」との認知もされているが、ホームコートおよび観客動員はバスケットボール界全体の課題とも言えるだろう。
こうした現状を踏まえ、バスケットボールを愛してやまない三浦は、「バスケの楽しさをより多くの人に知ってもらいたい。観戦していただくのももちろんですが、実際にプレーする楽しさを体験して欲しいと思っているので、クリニック(単発講座)を主催しています」と語る。
三浦のクリニックでは、バスケットボールレベルの高い小学生やプロを狙う人などが生徒として参加しているが、「分かりやすい」「何をすればいいか明確になった」「バスケがもっと楽しくなった」と多くの声が寄せられている。”指導力”は三浦の一つの強みでもあるようだ。
「バスケを授業や部活動で経験している人も多いのですが、『上手くなるための練習方法』をご存知の方は、まだまだ少ないと感じています。僕は、プロの実力が備わっていないレベルからトライアウトに挑戦して、プロになりました。だから、上手くなるためのやり方をたくさん知っていますし、『できない』を『できる』に変えていった経験があるので、壁にぶつかっている人の課題点を把握し、その改善方法を伝えることができます。どのレベルのプレーヤーにおいても基礎的な技術を含め、駆け引きなどが理解・習得できると、バスケが一層楽しくなります。そういうことも伝わると嬉しいですね」
「チャレンジする生き方」を自ら実践し、仲間を増やしたい
三浦のクリニックではバスケットボール向上の目的の他に、「自己成長」もテーマにしているのだが、「チャレンジと成長を楽しむ」心を持つ三浦らしいテーマである。
「『向上心のある人たちの集まり』という意味の『MASTER MIND』という言葉が好きなんですが、クリニックのコンセプトにピッタリだと思ってクリニック名にしてしまいました。『ともに切磋琢磨しながら、人間的にも選手としても成長していこう』という想いを込めています。生徒さんたちの成長を支援できることは、とても楽しいですし、僕自身の技術の向上につながっています。こうした輪を広めていきたいですね」
指導者としての活動にも力を入れているが、もちろん、選手としてのさらなる展開も考えている。「今まで5人制のバスケ『5on5』をやってきましたが、3人制の『3x3』の魅力にも惹かれています。3人でプレーすることによって、必然的に一人ひとりの役割が増える『3x3』は、チームで試合をクリエイトする『5on5』より、個人にフォーカスされることも増えるんですね。僕にとってはそこが魅力的です。ゆくゆくは『3x3』も視野に入れていこうと考えています」。舞台が変わっても、三浦の”挑戦する生き方”と”挑戦を楽しむ心”は変わらないのだろう。
文=佐藤美の