誰もが平等に戦えるスポーツ・テックボールで世界一を目指す

Athlete # 33
テックボール
早稲昭範/WASSE

「フリースタイルフットボール」ギネス世界記録保持者が新競技に参戦



「寝転びながらのリフティング」のギネス世界記録保持者である、フリースタイルフットボールのプロWASSEは、高い技術力をかわれ新競技のテックボールに誘われ、日本代表として第1回と第2回の「テックボールワールドカップ」に出場。
初回のベスト16から1年後の2回目はベスト8にランクをあげたのだが、彼の日本における練習環境はまるで整っていない状況だった。一人孤独な練習に励みトップ選手と互角に戦えたのは、並外れた分析力と、課題を分解して解決方法を構築するロジカルな練習によるところが大きい。

目的を成し遂げるために身につけたその能力は、彼が常にパイオニアだったからでもある。彼がフリースタイルフットボールの世界に飛び込んだ2004年の19歳当時、「フリースタイル」という言葉すら認知されていなかった。そして、2017年に日本上陸したばかりのテックボールもしかり。WASSEは自分で開拓するしかなかったのだ。

道無き道を切り拓いてきたプロフリースタイラー。新たな道をつくるべくテックボールへ



小学生の頃から「プロサッカー選手になる」と決めていたWASSEは、高校3年間はほとんどの時間をサッカーに費やしていた。しかし、その強い意志とは裏腹に厳しい現実が押し寄せてくる。度重なる腰の骨折と貧血や不整脈に悩まされ、夢を断念せざるを得なかった。恩師の助言もあり、「得意のリフティングでJリーグの舞台に立つ」ことを決意、彼の心に再び情熱が生まれた。しかし、当時はフリースタイルフットボールのパフォーマーという職業はなかったようで、道無き道を作る覚悟を決めていたのだろう。

WASSEのリフティング技術は「NIKE」の目に止まることになり、フリースタイルフットボール書籍とDVDに参加している。また、自ら開拓していったパフォーマーとしての活動のかたわら、子ども達にサッカー指導もしている。そして、JリーグやFリーグのピッチで、大観衆の前で縦横無尽にボールを操る技を披露するショーの仕事仲間として、テックボールダブルスのペア相手、菅原佳奈枝がいる。一緒にパフォーマンスする経験も豊富にあり、会場を沸かせる息のあった技には定評がある。

2017年4月、菅原から声がかかりテックボールを知ったWASSEは、「これだ!」と閃いたという。「子供の頃から『サッカーテニス』という、サッカーとテニスを融合させたような遊びをしていました。サッカー経験者なら誰でも知っていると思いますが、サッカーの練習にもなる遊びです。テックボールを見てサッカーテニスみたいだなと。そして、『明確な競技になっていなかった遊びを、完全なスポーツ競技にしてくれた』という感慨がありました。それから、『子ども達のサッカー指導に使えるツールになる』との確信もありましたね」
そして、日本代表というまたとないチャンス。道無き道をつくってきたWASSEが挑まないわけがない。

高い分析力とロジカルな練習で弱点克服、強みの強化。世界トップ選手から1セット奪う



2017年6月ハンガリー開催の第1回テックボールW杯では、テックボール発祥国のハンガリーとルーマニアが圧倒的に強かった。「スマッシュが圧倒的で素晴らしかった。どうあがいても勝てないと痛感した」とWASSEはいう。その悔しさをバネに、WASSEは自己分析と敗因を分析して、自分に何が足りなくて、何を強化すれば勝率が上がるかを研究した。

「あのスマッシュに対抗するには、左右同じ威力のスマッシュができれば勝算が上がると考え、1年間で両脚利きにしました。両脚利きは2018年10月の第2回W杯でも僕だけ」
ところが、WASSEがレベルをあげている間、当然のごとく各国の選手もレベルを上げていた。彼は、優勝したハンガリー選手の「見たことのない超ロングサーブ」に苦戦することに。

「ハンガリー選手の超ロングサーブには強力なスピン回転があり、1セット目は自分を軌道修正できずぼろ負けでした。2セット目は、攻略方法も分かり攻めていけたので勝てましたが、3セット目は敗れてしまいました」。その結果ベスト8に終わった。しかし、その選手はハンガリー国内で1セットも相手に取らせず勝ち進み、W杯では優勝したルーマニア選手とWASSE以外には1セットも奪われていないというから、 WASSEの技術力と適応力の高さに驚歎せずにはいられない。

WASSEはこの1年半、同じレベルで練習する相手がいなかったにも関わらず、なぜ成長できたのか?どうしてそこまで一人でたどり着けたのか?秘訣を尋ねてみた。

「以前から『リフティングは感覚だよね』という見解に疑問があって。どうして上手く行く時といかない時があるのか?そのバラツキはなんなのか?それを解決すべく、自分を分析する癖を付けてきました。客観的に弱みと強みを把握し、『身体の機能をどう使ったら弱みを克服できるのか』『どういう練習が強みを伸ばせるのか』ロジカルに考えるんです。ある問題をさらに分解して、その一つひとつに対し課題解決をしていく。僕の子ども達への指導も同じなんですよね。
だから、自分と相手を客観的に分析し、攻略方法を見出し、納得いくまでやり続ける。
この1年半かけて万全の準備をしましたが、海外の情報を入手できなかったことは大きかった。ヨーロッパの情報が何も入ってこないんですが当然ですよね、手の内なんて誰も見せたがらないですから。特にテックボール黎明期の今は。情報があれば、より精度よく練習できたと悔しいですね」。ヨーロッパとの格差を埋めるためにも、今後、日本人選手の海外遠征や、国内で海外との親善試合をすることは必要なのだろう。

「後世に名を残し歴史をつくる」。パイオニアだからこそできる生き方を



今回のW杯で新たな収穫を得たWASSEは、次なる戦略を考えている。
「僕の必殺技スマッシュを作っていくつもり。テックボール選手では、まだ誰も完璧なインステップキックができる人はいません。誰もやらない技、誰もやりたがらない難易度の高い技をつくって、世界一を狙っていきたいですね」

プロサッカー選手を夢見た少年は、挫折の後、プロフリースタイラーの先駆者となり、さらにはテックボールの牽引者となった。パイオニアの道を歩んできたWASSE にとって、テックボールの魅力とはなんだろうか。

「対人競技なのにサッカーと違いボディコンタクトがなく、競り合わないので、ボールコントロールという自分の技術がストレートに試合に出ます。テックボールは技術を磨くことが第一前提となりますが、自分の身体能力を超えて勝つチャンスのある競技です。だから、誰しもが平等に戦えるスポーツだと思うし、誰しもが日本代表として世界で戦えるチャンスの多いスポーツです。
マイナースポーツを否定的に考えることもできますが、マイナースポーツだからこそできることがある。夢を諦めなければ、後世に名を残せるチャンスだってたくさんある。その世界の歴史をつくる当事者にもなれる。僕は、フリースタイルフットボールの世界でそうしてきました。だから、テックボールも同じようにしていきます。それが最大の魅力ですね」
軽やかな語り口だが、理論派でありながら不屈の精神を内に秘めるWASSE。彼が世界の頂点に立ち、テックボールの歴史を作っていく様を見ていきたい。

文=佐藤美の




テックボール/Teqball

アスリート名

早稲昭範/WASSE

競技名:テックボール

生年月日:1985年9月8日

出身地:大阪府

身長・体重:178cm/ 68kg

血液型:O型

趣味:アウトドア及びスポーツ全般

競技名:テックボール

生年月日:1985年9月8日

出身地:大阪府

身長・体重:178cm/ 68kg

血液型:O型

趣味:アウトドア及びスポーツ全般

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